相続放棄した家の解体費用と片付けは誰の責任?放置リスクに注意

相続放棄を検討しているものの「家だけが残った場合、解体費用はどうなるの?」と不安に感じていませんか?
実は、相続放棄をしても不動産がそのまま残るケースは多く、誰が解体費用を負担するのか、片付けや管理はどうなるのかといった点が問題になることがあります。
また、相続放棄後に家を管理したり使用していた場合には「実質的な所有者」とみなされて、解体費用を請求される可能性もあります。
この記事では、
- 相続放棄した家の解体費用は誰が支払うのか
- 解体費用を支払わずに済む方法はあるのか
- 放置するリスクと、後悔しないための対処法
について、わかりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
相続放棄したのに不安…放棄した家の責任は誰が負う?
「相続放棄をしたから、もう関係ないはずなのに、家のことで市役所から連絡がきた」「空き家の解体費用について近所から心配されている」そんな声を耳にすることがあります。
相続放棄をすれば、たしかにその家の所有権や固定資産税などの「財産に関する権利・義務」はすべて放棄したことになります。しかし、すべての責任から完全に解放されるとは限らないのが実情です。
特に次のようなケースでは、思わぬかたちで責任を問われることがあります。
相続放棄後でも責任を問われるケースとは?
● 空き家が放置されて危険な状態になった場合
空き家が老朽化して倒壊や火災の危険があると、行政から管理責任を問われることがあります。たとえ相続放棄済みでも、「相続人不明」「管理者不在」状態が続くと、近隣住民や行政が困り果ててしまうのです。
● 共有名義のケース
亡くなった方の家が、すでに生前に一部共有されていた場合、あなたが放棄しても他の共有者との関係が残ることがあります。「放棄したから一切関係ありません」と言えない場合もあるため、事前の確認が重要です。
● 相続財産管理人が選ばれていない場合
相続放棄をしても、誰かがその家の管理をしなければなりません。すべての相続人が放棄すると「相続人不在」となり、原則として家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てる必要があります。これを放置していると、「誰が管理するのか」問題が浮上し、事実上の責任を押しつけられることも。
相続放棄した家を勝手に片付けたり解体したりできる?
相続放棄をすれば、もう自分のものではない。それなのに、「荷物が多くて近隣に迷惑をかけている」「台風で屋根が飛びそうで怖い」など、放置するにも心配な場面は多いものです。
中には、「片付けるだけなら問題ないはず」「早く更地にしたほうが近所のためになる」と善意で行動してしまう方もいますが、これは大きな落とし穴です。
勝手に片付けるのはNG!相続放棄後の「手をつけた」リスク
相続放棄をした人が、家の中の遺品整理をしたり、建物の修繕・清掃などを行った場合、法律上「相続財産に手をつけた」とみなされるおそれがあります。
これが問題になるのは、「単純承認」と呼ばれるルールがあるためです。
相続放棄後に家財や遺品を勝手に処分すると、「単純承認」とみなされ、放棄できなくなるリスクもあります。
※単純承認とは、プラスの財産もマイナスの財産もすべて無条件で相続することを意味します。
放棄の意思に反して財産を処分すると、単純承認したとみなされ、相続放棄が無効になる可能性があります。相続放棄後は、基本的に家に手を出さないことが重要です。
放置していて大丈夫?相続放棄後の空き家に潜むリスク
相続放棄をして家の管理から離れたものの、その家を放置し続けるのは決して安全ではありません。空き家が老朽化すると、倒壊や火災などの危険が増し、周囲の住民や地域全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。
老朽化した空き家が引き起こす問題
- 倒壊リスク
築年数が経過した空き家は建物の耐久性が低下し、強風や地震などで倒壊の恐れがあります。倒壊した場合、隣家や通行人に被害を与えることも。 - 火災の発生
空き家は放火や電気系統の劣化による火災リスクが高まります。火災が起これば、周辺地域に広がる可能性もあり、社会問題になることもあります。 - 衛生・環境問題
ゴミの不法投棄や害虫・害獣の発生など、周辺環境が悪化することもあります。
もし、家が倒壊して隣家が全壊かつ、隣人を死亡させた場合の損害賠償額は2億円以上になると試算されています。
引用:公益財団法人 日本住宅総合センターの「空き家発生による外部不経済の実態と損害額の試算に係る調査」の研究結果より

行政代執行による強制解体の可能性
「雑草や樹木が道路に飛び出している」「建物が倒れそう」などの理由で、自治体が空き家を特定空き家として認定することがあります。特定空き家に指定されると、自治体から改善指導を受け、改善が行われない場合は行政代執行によって強制的に解体されることがあります。
強制解体の場合、解体費用は家の所有者が負担することになります。また、解体費用を支払う余裕がない場合、最悪の場合、財産が差し押さえられる可能性もあります。
参照:国土交通省 空家法に基づく行政代執行及び略式代執行事例
近隣トラブルや固定資産税の発生も要注意
空き家の放置は、近隣住民とのトラブルを招くことがあります。騒音や害虫、景観の悪化などが原因で、苦情が寄せられることもあります。
また、空き家でも固定資産税は発生し続けます。相続放棄したからといって税金が免除されるわけではないため、管理しないままだと税金の滞納や差押えといった問題にも発展します。

解体費用の相場と、費用が発生するケースの注意点
相続放棄した家の解体費用の目安
相続放棄した家の管理を誰かが引き継ぐ際、気になるのが「解体費用」です。解体費用は家の状態や立地条件によって大きく異なりますが、一般的な相場と注意すべきポイントを押さえておきましょう。
ここでは、一般的な解体費用の相場をお伝えします。
- 木造:31,000円/坪~44,000円/坪
- 鉄骨造:34,000円/坪~47,000円/坪
- RC造(鉄筋コンクリート):35,000円/坪~80,000円/坪

解体費用が高くなる主な理由
- 立地条件
道路幅が狭く重機が入りにくい場所、住宅密集地では作業が複雑になり費用が増加します。 - アスベストの有無
建物にアスベストが含まれている場合は、専門的な処理が必要で、数十万円〜数百万円の追加費用が発生します。 - 残置物の量や状態
家具や家財、ゴミが多く残されていると撤去費用も加算されます。 - 解体時期の需要
解体業者の繁忙期や天候の悪い時期は価格が上がることもあります。
誰が解体費用を負担するのか?
相続放棄した家の解体費用は、基本的に相続人の誰かが負担します。以下のようなケースがあります。
他に相続人がいる場合
相続放棄しても、他に相続人がいれば、その人が家を相続し、解体費用も負担します。
優先順位は、以下の通りです。

常に相続人 | 被相続人の配偶者 |
---|---|
第1順位 | 被相続人の子 |
第2順位 | 被相続人の両親・祖父母 |
第3順位 | 被相続人の兄弟姉妹 |
相続人全員が相続放棄し、相続財産清算人を選任した場合
全員が相続の放棄を選択し、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任すれば、家の管理や解体費用は相続財産から支払われます。
この場合、放棄した人が費用を負担することはありません。ただし、相続財産清算人の選任には裁判所への申し立てが必要です。
※相続財産清算人とは、相続人がいない相続財産(遺産)を管理・清算し、最終的に国庫へ帰属させる役割を担う人です。通常、弁護士や司法書士などが選任されます。
相続人全員が放棄し、相続財産清算人も未選任の場合
相続人全員が相続放棄をし、相続財産清算人もまだ選任されていない場合、相続財産清算人が選任されるまで、家に対して適切な管理と保存義務を果たし続ける必要があります。
これを「保存義務」と言います。この義務を負うのは、実家に居住していた人や頻繁に出入りしていた人です。
この保存義務は、民法第940条第1項に以下のように定められています。
相続の放棄をした者がその放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有して
引用:法務省 民法第940条第1項
いる場合には、相続人又は相続財産法人に対して当該財産を引き渡すまでの間、
その財産を保存する義務を負う。この場合には、相続の放棄をした者は、自己
の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存すれば足りる。
つまり、実家に住んでいたり頻繁に出入りしていた相続人は、相続放棄をしても、別の誰かが管理を始めるまでは、自分の財産と同じようにその家を管理し、解体費用を支払う責任を負う可能性があります。
相続放棄した家の解体費用を支払わずに済む方法
後順位の相続人に引き継ぐ
自分が相続放棄した後、次の順位(例:兄弟姉妹、甥姪など)の相続人が存在する場合、その人たちに財産管理責任が移ります。後順位の人たちも相続放棄するかどうかで最終的な流れが決まるため、できるだけ早く次の相続人への対応を進めましょう。
相続財産管理人の選任を申し立てる
相続放棄後、家が放置されていると、保存義務が発生することがあります。そのため、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てることで、管理や処分を任せることができます。これにより、自分が管理や費用負担をするリスクを避けることができます。
遺品整理や家財の処分、家の解体などを自分で行ってしまうと、「単純承認(=相続する意思があるとみなされる)」と判断されることがあります。これにより、相続放棄が無効になるリスクがあるため、勝手に手を出さないよう注意が必要です。
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