長屋の切り離しとは?費用・注意点・建築士診断の必要性を解説

長屋を「切り離して活用したい」「相続で一部を分けたい」と考えている方は少なくありません。ところが、実際に長屋を切り離すとなると、建物の構造や隣地との境界、必要な手続き、工事にかかる費用など、検討すべき点が多く、「どれくらい費用がかかるのか」「どの業者に依頼すれば安心なのか」と不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、長屋切り離しの基本的な流れから、費用の目安や注意点、トラブルを避けるためのポイントまでわかりやすく解説します。
長屋と長屋切り離しについて
長屋とは
長屋とは、複数の住宅が壁や屋根を共有し、横に連続して建てられた住宅のことです。いわゆる「連棟式住宅」と呼ばれ、都市部の下町や昭和期の住宅地で多く見られます。
一見すると一戸建てのように見えても、構造的には隣家と壁・基礎・屋根などを一体化して建てられている場合が多いのが特徴です。そのため、老朽化や相続、土地活用の場面で「長屋をどう扱うか」が課題になるケースが少なくありません。
長屋の切り離しとは
長屋を解体・改修する際には、隣家と共有している壁や構造部分を分ける作業が必ず発生します。つまり、通常の戸建て住宅の解体とは異なり、隣家と一体化した部分を分離する工程があるため、これを「切り離し」と呼ぶのです。
切り離しには大きく分けて2つのケースがあります。
- 独立した住宅として利用するための切り離し
共有していた壁や屋根を分け、新たに外壁や補強工事を施して、一戸建てとして利用できる状態にするケースです。相続やリフォーム、売却の際に選ばれることが多くあります。 - 一部を解体するための切り離し
連棟のうち不要な部分や空き家部分だけを取り壊し、残る住宅を維持するケースです。土地の有効活用や老朽化対策として行われます。
長屋切り離しにかかる費用の目安
屋の切り離し工事は、通常の戸建て解体に比べて「隣家と接している壁の分離」「補強工事」「養生作業」などが必要になるため、坪単価が割高になる傾向があります。
坪単価の目安
- 通常の木造住宅の解体費用:1坪あたり 3万〜5万円
- 長屋の切り離しを伴う解体費用:1坪あたり 4万〜7万円
例えば20坪の長屋を切り離す場合、
- 通常解体なら 約60万〜100万円
- 切り離し工事を伴う場合は 約80万〜140万円
が目安となります。
費用が変動する主な要素
- 隣家との兼ね合い
隣家の壁を保護する養生費用
隣家との境界部分の補強工事
工事に伴う承諾や調整にかかる費用 - 立地条件
前面道路が狭い場合、重機が入れず人力作業が増える
住宅密集地では養生シートや防音対策の追加が必要
見積りが重要な理由
長屋の切り離しは建物ごとに条件が大きく異なるため、「一律いくら」と断定することはできません。
必ず事前に現地調査を行い、複数業者から見積りを比較することで、適正価格と必要な工事内容を把握できます。
長屋切り離し工事の注意点

長屋の切り離し工事は、通常の戸建て解体と比べてリスクや調整が多く、隣人との合意形成も必須となります。ここでは、特に注意すべきポイントを解説します。
1. 建築士の診断が求められる場合がある
長屋は隣家と構造を共有しており、切り離しによって耐震性や建物全体の強度が低下する可能性があります。
このため、隣人から「切り離しによる影響がないか建築士に診断してほしい」と求められるケースも少なくありません。
診断を受けることで、切り離し前後の強度を計算し、必要な補強工事を明確化できます。結果的に隣人の理解を得やすくし、後のトラブル防止にもつながります。
2. 家屋調査をしておくと安心
建築士の診断に加えて、**第三者による家屋調査(事前調査)**を行っておくのも有効です。
家屋調査では建物の傾きや壁のひび割れなどを測定・記録するため、工事後に「隣の家に影響が出たのではないか」といったトラブルが起きた際に原因を明確にできます。
工事前に証拠を残しておくことで、自分の立場を守ることにもなります。隣人からの要望に応じるのは負担に感じるかもしれませんが、後々の紛争回避につながるため前向きに検討すると良いでしょう。
3. 耐震強度が低下するリスク
建物は一体構造として建てられているため、切り離すと強度が下がるのは避けられません。
特に長屋では内壁だった部分が外壁に変わるため、補強を行わなければ耐震性に問題が生じます。
この点でも、建築士による診断と補強計画が不可欠といえるでしょう。
4. 隣人の了承は必須
長屋の切り離し工事を行う際には、隣人の同意が必須です。
法的には「区分所有法」によって隣家との界壁・柱・梁は共用部分とされ、取り壊しや形状の変更には所有者全体の4分の3以上の同意が必要とされています。
長屋のように構造上区分され、独立してそれぞれの部分を利用できる建物(区分所有建物)に関する取り決めを行った法律に区分所有法があります。区分所有法によると隣家との間の界壁・柱・梁は共用部分であり、取り壊しを行うためには隣人の承諾と全所有者の3/4以上の承諾が必要です。
(区分所有法)(共用部分の変更)
第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。 2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。
引用:建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)
さらに、隣人が同意の条件として「建築士の診断」や「補強工事の実施」を求める場合、それに応じなければ工事を進めることは難しいのが実情です。
こうした条件をしっかりと満たし、隣人の理解を得ながら進めることがトラブル回避につながります。
まとめ
長屋の切り離し工事では、建築士の診断や家屋調査は必須ではないが、隣人の了承を得るために必要になるケースが多いのが現実です。
診断や調査を取り入れることで、耐震性を確保しつつ隣人との信頼関係を築くことができ、安心して工事を進められます。
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