相続をせずに解体できる?注意点や手続き方法を徹底解説
「親が住んでいた家を壊したいけれど、まだ相続の手続きが終わっていない…」
そんな状況で、解体工事は進められるのか、不安に感じていませんか?
実際に私たちのもとにも
「相続を済ませていない家は、勝手に壊していいんですか?」
「相続人の一人が反対していて話が進まないんですが…」
といったご相談が寄せられます。
この記事では、相続手続きが完了していない状態で解体が可能なのか、
また、解体するために必要な条件や注意点、スムーズに進めるための流れについて、わかりやすく解説します。
相続前に進めようとしている方、手続きでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
相続せずに家を解体できるの?結論は「原則NG」

結論からお伝えすると、相続手続きが完了していない状態では、原則として家を解体することはできません。
その理由は、まだ不動産の正式な所有者が決まっていないからです。
相続が発生した時点で、その不動産は「相続人全員の共有財産」という扱いになります。
つまり、たとえあなたがその家に住んでいたり、固定資産税を支払っていたとしても、単独で勝手に解体する権利はないのです。
なぜ相続せずに解体できないのか?
家の所有者が「決まっていない状態」であること
人が亡くなった時点で、その人が所有していた家や土地などの不動産は、すぐに誰か1人のものになるわけではありません。正式な手続き(相続登記)を経るまでは、「この家の正式な持ち主は誰か?」が明確に決まっていない状態になります。つまり、法律上は“所有者不明”という扱いに近いのです。
相続が発生すると「相続人全員の共有財産」になる
相続が発生した瞬間から、不動産は相続人全員の共有財産という扱いになります。例えば、兄弟姉妹が相続人になっている場合、その家は全員で共同所有していることになります。したがって、1人の判断だけで家を売却したり、解体したりすることはできません。
自分が住んでいても「単独判断ではNG」な理由
「自分がこの家に長年住んでいたから」「自分が固定資産税を払っているから」といった理由があっても、それだけでは解体の決定権はありません。たとえ生活の中心になっている家でも、相続人全員の合意がなければ、勝手に解体することは法律上認められていないのです。
勝手に解体した場合、法的な問題は?
相続人の同意を得ずに建物を壊すことは、民法第709条に基づく不法行為に該当し、損害賠償請求をされる可能性があります。
さらに、名義が自分以外の相続人と共有になっている建物を無断で壊すと、刑法第260条に規定されている建造物等損壊罪にも該当する可能性があります。その場合、最長で5年以下の懲役が科される可能性があります。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用:電子政府の総合窓口(e-Gov)
(建造物等損壊及び同致死傷)
第二百六十条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
引用:電子政府の総合窓口(e-Gov)

ケース別|解体を進めるための具体的な手順
解体を進めるには、まず「現在の所有者が誰なのか」を明確にすることが重要です。以下に、よくあるケース別に解体を進めるための具体的な手順を紹介します。
ケース① 所有者がご存命の場合の手続きは?
もし建物の所有者(例えばご両親)がご存命の場合、解体工事を進めるには所有者の同意が必須です。相続が発生していないため、相続に関する手続きは不要ですが、解体にはいくつかの注意点があります。
- 第三者が解体を手配する場合
解体工事を依頼するのが建物の所有者ではなく親族などの、所有者本人以外の場合は、委任状などの書面で所有者の同意を示す必要があります。
- 所有者の判断能力に不安がある場合
認知症などで判断が難しい場合は、成年後見制度を利用することで、後見人が法的代理人として解体を進められるようになります。
Q&A
Q. 親族や他人の建物を壊すとき、委任状は必要?
はい、所有者の同意を示す委任状が必要です。ただし、実務上は解体業者とのやり取りで対応できるケースも多いため、事前に相談してみましょう。
Q. 解体工事会社とのやり取りは誰が行う?
実際のやり取りや契約は、必ずしも所有者本人である必要はありません。
工事請負契約書の名義人や費用の支払い者が別の人物(たとえばお子さん)でも問題ありません。
「親が亡くなったため、実家を壊したいのですが・・・」というように相談していただければ、問題なく話を進めることが出来ます。
Q. 解体費用は誰が払う?
こちらも所有者でなくてもOKです。
支払い者は第三者でも問題なく、実際には家族や親族が費用を負担するケースが多くあります。
解体費用の詳細については、こちらのページでさらに詳しくご確認いただけます。

建物の所有者がすでに亡くなっており、相続人は自分一人だけの場合
建物の所有者がすでに亡くなっており、相続人が自分一人だけという場合は、「相続せずに解体できるのでは?」と思われがちです。しかし、いくつかの注意点があります。
まず、他の相続人がいないため、合意形成の手間がなく、解体の意思決定はスムーズです。ただし、法的には名義が故人のままでは、あなたが正式な所有者とはみなされません。
実際には相続登記(名義変更)を行っていなくても解体業者と契約することは可能ですが、以下のような場面では正式な名義人であることが求められることがあります。
- 自治体の補助金を利用する場合
- 解体後の滅失登記を行う場合
Q&A
Q. 委任状は必要?
相続人が一人であれば、委任状なしで直接、解体の手続きを進めることが可能です。ただし、建物の登記名義が故人のままの場合、補助金申請時などには戸籍謄本や除籍謄本の提出が求められることがあります。
Q. 工事会社とのやり取りは誰が行う?
相続人本人が直接、解体業者と契約し、やり取りを行うケースが一般的です。契約者や費用の支払者は、登記名義人と一致していなくても問題ありません。「親族が亡くなったため、建物を解体したい」と伝えれば、業者側も事情を汲んで対応してくれます。
Q. 解体費用は誰が払う?
通常、実際に解体を手配する相続人が費用を負担します。
解体費用の詳細については、こちらのページでさらに詳しくご確認いただけます。

建物の所有者がすでに亡くなっており、相続人が複数いる場合
相続人が複数いる場合、解体には全員の合意が必要です。1人の判断で解体工事を進めると、他の相続人からトラブルを引き起こす可能性があります。遺産分割協議を行い、全員の合意を得ることが重要です。
【遺産分割協議を行う】
相続人全員で「遺産分割協議」を行い、以下の点を確認しましょう。
- 誰が建物を相続するのか
- 解体することに全員が同意するか
- 解体費用を誰が負担するのか
協議の結果、合意に至った場合、代表者が解体業者と契約を結びます。この際、合意内容を「遺産分割協議書」に文書として残し、全員の署名と捺印をもらうことをおすすめします。
【注意点】
①相続放棄を検討している相続人がいる場合
相続人の中に「相続を放棄する予定の人」がいる場合、その人が解体に関与してしまうと、後で放棄の申し出が認められなくなる可能性があります。そのため、相続放棄を希望する場合は、まず家庭裁判所で放棄の手続きを済ませてから協議を進めましょう。
②相続人の一部が反対している場合
相続人の中に「解体に反対する人」がいる場合、無理に解体を進めると法的トラブルに発展する可能性があります。このような場合は、まず話し合いや遺産分割協議を行い、全員の合意を得ることが最も重要です。
Q&A
Q. 委任状は必要?
代表者が手続きを行う場合、他の相続人からの委任状が必要になるケースがあります。業者によっては、全相続人の同意書を求めることもあるため、事前に確認することが重要です。
Q. 工事会社とのやり取りは誰が行う?
遺産分割協議で決めた代表者が契約・連絡の窓口となるのが一般的です。相続人全員の同意があることを前提に、1名がまとめて業者とやり取りを行います。
Q. 解体費用は誰が払う?
費用負担については、相続人間の話し合いによって決める必要があります。全員で均等に負担することもあれば、特定の人(例:土地を引き継ぐ人)が全額負担するケースも。金銭トラブルを防ぐためにも、負担割合も協議書に明記しておくと安心です。
解体費用の詳細については、こちらのページでさらに詳しくご確認いただけます。
まとめ
相続せずに解体を進めるには、慎重な手続きと法的な確認が欠かせません。まず、家の所有者が決まっていない状態では解体を進めることはできません。相続が発生した時点から、家は相続人全員の共有財産となるため、解体を進めるには全員の合意が必要です。
また、勝手に解体を進めると法的リスクが伴い、不法行為や建造物損壊罪に問われる可能性もあります。解体を依頼する際には、所有者の同意を得ることや、第三者が手配する場合の委任状の確認も重要です。
解体を進める際は、相続登記や相続人の合意を得る手続きが必要な場合が多いため、早期に専門家に相談することをお勧めします。法的リスクを避け、スムーズに解体を進めるためにも、必要な手続きをしっかりと踏んでいきましょう。
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